日々雑感

元牛飼いの会社員です。時折、考えたことを書いています。

「パラサイト 半地下の家族」を観て

非常に面白興味深く、怖ろしい映画でした。端的に言えば、現代の格差社会をテーマにした韓国映画。観てよかったけれど、もう一度観たくはない。こういった、格差社会をテーマにした映画がここ数年、韓日英米でそれぞれ製作され、いずれも話題作となったとのこと。日本発は当然、「万引き家族」。これらの国々に共通するのは、ジニ係数が高いこと。やはり、多くの人々が日常生活の中で、社会に存在する格差を感じ取っているからこそ、このような映画が製作され・評価されるのだろう。

この先はわたしのより個人的な見解、感想。ネタバレはなし。

今現在、どの”階層”にいるにしろ、大多数の人は、今よりも下には落ちたくないし、出来れば上に行きたい。”賢さ”と”気力”を兼ね備えた人々は、自分がより高い価値を世の中に提供できる存在となるために努力を重ねることで、この社会を生き抜いていく。そして、そのこと自体を楽しもうとして、或いは楽しんでさえいる。しかしそもそも、”賢さ”と”気力”をある程度兼ね備えた人間に育つことができるかどうか自体、実際は、与えられた遺伝子と環境という”手札”に大きく左右されている。しかし、大抵の”成功者”は、自らの”成功”は、与えられた恵まれた”手札”よりも、自らの重ねた努力によって勝ち得たと考えたがる。これは当然の帰結だろう。そもそも人はある程度の自己肯定・正当化をせずには生きていけない一方で、”他者の手札”を体感する機会は永遠に訪れないわけだから、”他者の手札”について深く思いを巡らす機会を持った、おそらくは共感力の高い人以外は、放っておけば、自らが体験・積み重ねてきた努力の方に注意が向く。結果、”成功”を得られなかった人のことを、”自己責任”として切り捨てる傾向が強まる。
そのような現実を踏まえると、この「パラサイト」のような、背景にはリアリティを保ちつつも・ストーリーに映画らしいエンタテインメント性が盛り込まれた映画が世に生み出されたことに意味を感じるし、それがパルム・ドールを受賞したことにも得心する。おそらくはこの映画を観終わった人は、どのような感想を持つにしろ、自らの住む社会について再び思いを巡らす時間を持つこととと思うし、そのことに価値があると思う。

http://www.parasite-mv.jp/