【Vicom2010年 04月26日投稿を転載】「マイブーム」「~とは思いますけど」

出現以来、ずっと気になっていた言葉・言葉遣いがある。

①「マイブーム」「わたし的には」「わたしの中で」。

最近はもう大分使われなくなった気がするけれど、例えば、「わたしの中で今●●が流行っていて」「●●がマイブームで」など。

昔は単に、「私は今、●●に興味があります。●●が好きです。」と表現されていたはず。でも、あえて、「マイブーム」「私の中で流行っている」という言葉が生まれたのは何でだろう、と考えた。

これらの言葉は、女子中高生あたりが発祥源だったように思う。たぶん、「みんな一緒」を好む日本人の国民性、そして、その中でもとくに同調圧力の強い中高生の間で、「私は●●が好き、●●に興味がある。」と正面切って言うのが難しい空気があったんだろうなぁ、と思う。

例えば、「私は(民謡の)黒田節が好きで」とは、中高生の女の子はきっとなかなか言えない・言えなかっただろう。

でも、それを「私の中で今、黒田節っていうのが流行っていて。」と表現したのは苦肉の策というか、ほんの少しだけれどハードルを低くしたのかなぁ、と思う。

ハードルが低くなる理由は、「ブーム」「流行」というものが、同調を好む日本人の中ではものすごく権威のある存在だから。もちろん、「マイブーム」や「私の中で流行っている」となれば、実際は、自分一人しか関わっていないことだけれど、「ブーム」「流行」と言うとつい、「ハハーッ」と平伏してしまう多くの日本人の心を突いた新表現だったんだと思う。

そんなわけで、私はずっと、「マイブーム」「わたしの中で」といった言葉を「潔くない」と感じて、あんまり好きになれなかった。
「私は黒田節が好き。」と自信を持って言うほうがいいのに、って思っていた。

でも、最近ふと別の見方にたどり着いた。

「マイブーム」「私の中で流行っている」っていう言葉が生まれたからこそ、「人とちょっと違う自分の趣味」などを堂々と他人に明かせる人が増えた。
そうなると思ったよりも、変わったことに興味を持つ人は多いことにみんなが気がつきだし、最近ではむしろ、「みんなと一緒じゃない変わった自分」を押し出せるようになってきた。

だから、「マイブーム」という言葉はもうしばらくしたら、時代に要請された言葉として使命を終えて、消え去っていくのかなぁと思う。

②「~とは思いますけど(ね)」
これも、もう一つ気になる言葉遣い。いつの頃からか、TVの街頭インタビューなどでよく耳にするようになった気がする。

「●●についてどう思われますか?」
「いや、まあ、頑張ってくれてるのでいいとは思いますけど。」

最後が逆接なので、「思いますけど」の続きに、「でも~」がありそうな感じがするけれど、実際は、とくにそうではないことが多い。
そんな時、「~とは思いますけど」というのは、自分が述べた「~」という内容をことさら限定的にしている。

「私は、(○○という限定的な局面・エリアに関しては)『~だ』という意見を当面述べてますけど、それ以外の部分については別に何も言ってませんし・これは私の意見の全てでもないですよ。」

といった、他者からの非難に備えた自己防御的な心の動きを言外に感じる。。。わたしの考えすぎかもしれないけれど。

でも、もし私のこの言葉遣いの受け取り方が見当違いじゃないとしたら、やっぱり日本人はまだ、自分の意見を表明することへの怖れを強く抱いているのかな、と思う。

むしろ、この言葉遣いがわざわざ“生まれてきた”としたら、従来よりも同調圧力は強まっているんだろうか。それとも、TVインタビューという不特定多数の人に視聴されるシチュエーションだから、いつもよりも自己抑制が強まるんだろうか。


こういうことを研究・分析してくれている本があったら買うのにな、と思う。